ひとりだと思っていた君へ

照れる柚月に対して、湖夏は「なんかムカつく」と冷やかすように言った。

出店のメイン会場は中庭になっていて、中には教室でやっているところもあるみたいだ。
タコ焼きや焼きそばと言った定番のものからチュロスやワッフルなどのスイーツもあった。
おのおの食べたいものを選んで、飲食用のテーブルに座る。ハローくんはタコ焼きととんぺい焼きとフランクフルトとポテトと沢山購入している。

ポテトは「食べていいよ」とテーブルの真ん中に置いてくれた。

通りがけの須長くんと目が合い「柚月」と声をかけられた。
看板を持っているから、どうやらお化け屋敷の宣伝をさせられてるらしい。

「良かったら後で来てよ」
「うん。わかった。行けたら行くね」

そして不思議そうな表情でテーブルの方を見た。無理はない。ハローくんはともかく金髪の渋谷が柚月の友達としては意外だからだろう。

「あ、友達。遊びに来てくれて」と簡単に紹介すると、二人は小さく頷いた。
「どうも」と軽く挨拶をして離れた。

「お化け屋敷、後で行く?」
「行く行く。こういうときじゃないと行けないし」と渋谷くんが答える。

「えー。なんで?」
と不思議そうな湖夏。

「だってうち男子校だよ。考えてみてよ。お化けも男、一緒に行く奴も男。楽しみゼロじゃん」
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