ひとりだと思っていた君へ

「何それ。いいじゃん別に、男同士で行ったって」
「えー。嫌だよ。寒い」

怖い印象だった渋谷と打ち解けたように湖夏が話しているが、ハローくんは心ここにあらずといった風に口元に箸をくわえたままボーッとしていた。
それが気になった柚月は呼びかける。

「ハローくん?」
「ん?」
「大丈夫?」
「ん? 大丈夫。お化け屋敷、いいねー。俺も行きたい」
「じゃあ食べたら行こう。あ、私、タピオカミルク飲みたいな。他に飲みたい人いる?」

湖夏が言うと柚月とハローくんが手を挙げ、渋谷が一緒に買いに行くとその場を離れた。

「お願いします」
と見送り、ハローくんの方に顔を向けると柚月は噴き出した。

「ん?」
「またついてる」

柚月は自分の口の端と端を指で触れる。ハローくんのそこにもタコ焼きのソースとネギがある。どうやってついたのかと問いたいくらいだ。
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