ひとりだと思っていた君へ
「朝芽先輩って優しいね。これ、どこで食べようか?」と尋ねると、それに答えずハローくんは突然朝芽先輩に駆け寄り腕を掴んだ。
振り返った彼女も目を見開き驚いていて、
「びびびびびっくりした。どうしたのかの?」と声が上ずっている。
柚月はどうしたんだろうと考えながらもそこから動けなかった。
ハローくんが、すっと顔を朝芽先輩に近づけるから息を呑む。
耳元で何か伝えているけど、こちらまでは聞こえない。
内緒話をしているような、意味深な話をしているような感じだ。
腕を離すと朝芽先輩の強張った身体が緩んで、また優しい顔に戻った。
そして柚月に一度視線を合わせてから、ハローくんに手を振った。
柚月のところに戻ってきたハローくんは「ごめんね。ちょっと言い忘れたことがあって。餃子楽しみだねー。早く食べよう」
とさっきとは打って変わってウキウキした様子に拍子抜けする。