ひとりだと思っていた君へ

「あ、うん」

もう少し一緒にいられると柚月は思っていたものだから、急に拍子抜けする。

短い通話を終えると柚月に昇降口で待ち合わせしたと告げ立ち上がった。

「湖夏ちゃんは、ここまで来てくれるって」
「あっ、そうなんだ」

柚月は見送りたいと思ったけれど、
「今日は誘ってくれてありがとね。来れて良かった」
別れの挨拶をするものだからそれも言い出せず
「うん。私も、来てくれて嬉しかった。ありがとう」
「じゃあね」
「うん。気を付けてね」

彼は手を振ると、階段を降りて行った。
見えなくなるまで見送り、しばらくそこにいると湖夏が「ゆーづき」と背後から肩を抱いた。

「湖夏」
「どうだった?」
「どうだった? って、餃子食べた」
「また食べてたの? しかも餃子?」と笑う。

「なんかね。ハローくんが、朝芽先輩と知り合いみたいで、家庭部の餃子もらったの」
「えー! まじで朝芽先輩と知り合いなの? せまっ。すごいねー。何友達なんだろう?」
「わかんない」
「聞いておかないと。元カノとかだったらどうするの?」
「え」
「あ、ごめん。冗談、冗談。でも異性の友達って気になるよね。どういう友達なのかってさ」

言われてみると確かに気になる。
でもどういう関係なの? って質問したくなるような、何か関係があったような雰囲気ではなかった気もする。
だけど深く考えてしまうと、わざと普通に見せていたのかもしれない。
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