ひとりだと思っていた君へ

「ほら、柚月、冗談だってば。
柚月にとっての須長っちかもしれないしさ。
ていうか、渋くん話してみたらいい人だったね。
冗談でハローくんと柚月、似合う気がするんだよねーって言ったら、なんか渋くんも、雰囲気あう気がするって言うからくっつけようかって話をしてたの」
「嘘、二人で盛り上がらないでよ」
「いいじゃん。こういうのは周りから固めていくべきだよ。って、こーんな心配顔して、まだ気持ちわかんないとか言う気?」
「気持ち?」
「まあいいや。ハローくん、しばらく彼女いないっぽいし。渋くんも、あいつにそろそろ新しい恋でもしてほしいと思ってたって言ってたし。もしかしたら、今凄くいいタイミングかもよ」
「そうなんだ」
「ほら、また心配顔」
と湖夏はいい加減、好きだと気づきなさいよと言いたいようだ。

柚月は、彼女がしばらくいないということよりも新しい恋という言葉が引っ掛かっていた。

新しい恋をしてほしいというのなら、前の恋とはどういうものだろう。
どんな恋をしてきたんだろう。

目を引く容姿だし、彼女が絶えない人と言われても納得できるのに、しばらく彼女がいないというのもよく考えると意外だ。

なぜかハローくんが朝芽先輩の腕を掴む瞬間を思い出す。
何か必死に伝えたいことがあったように感じたからだ――。
< 61 / 204 >

この作品をシェア

pagetop