ひとりだと思っていた君へ
夕食の時間になる。パパは仕事で遅くなるから今日もママと柚月と美織、三人で食事をとる。文化祭で食べすぎたからと柚月はご飯の量を減らすようにお願いした。
「ご飯減らしてって何をそんなに食べてきたの」
とママは呆れたように言う。
「ポテトとか餃子とか焼きそばとか。あ、タピオカミルクも飲んだよ。抹茶味でおいしかった」
「へえ。出店も色々出してるのね。文化祭、楽しかった?」
「うん」
「そう」
と微笑む。
美織がダイニングテーブルの椅子を引きながら
「お姉ちゃん、抹茶、嫌いじゃなかったっけ」
「そう思ってたんだけど、最近飲めるようになったよ」
「へえ。昔、お姉ちゃんと二人で抹茶飲んでさ、気持ち悪くなってから、私は未だに好きじゃないな」
「あれ? そんなことあったっけ? どうせまた他にもお菓子とか食べ過ぎて具合悪くなったんじゃないの」
とママが笑う。
「どうだったかな。覚えてない」
と柚月は曖昧に答えた。
食事を終え、柚月は食後の薬を服用する。
手伝うよと食器を軽く洗い、食洗器にかける。
美織はソファに座ってテレビを観ていた。
横でママが「たまには美織にも手伝ってもらいたいわ」とぶつくさ文句を言う。それを美織が聞き流す。
いつものことで、柚月は美織が手伝いをしないことを問題だとは思っていないから、笑って受け流した。