ひとりだと思っていた君へ
5

『今日は文化祭に来てくれてありがとう。楽しかった。
湖夏と渋谷くんが仲良くなってたのにはびっくりしたけど。
また遊ぼうね』

柚月は今日のお礼をメールでする。文面を何度も確認して、送信するまでに時間がかかった。

『こっちこそ、ありがとう。なんか渋のくせに調子にのってた』

「調子にのるって、もしかして湖夏に好きだと思われてると思ってるってことなのかな」と湖夏のナチュラルな演技を思い出しくすりと笑う。
確かに勘違いしてもおかしくはないし、実際、彼女の気持ちはどうなんだろう。
しばらくメールのやりとりをして、『おやすみ』と打ち込んだ。

柚月はベッドに潜り込み、右に寝返りを打った。
こうしてると自分の心臓の音がドクドクと響いて、その音の大きさにびっくりするし、少しだけ怖くなる。
そっとキャミソールの中に腕を入れた。柚月には中一のときに心臓移植した傷跡が残っている。そこを指でなぞった。
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