BRST!
"んーん、大した用事じゃないんだけど…。やっぱ心配させちゃったね。"
はは、と自嘲気味に言葉をこぼすゆき。取り敢えず何事もなかったことが窺えて、私は安堵の息を吐いた。
「取り立てるような真似してごめんなさい。それにしても、ゆきから電話なんて珍しいですね。」
よくメールで近況を伝えたりする私たちだけれど、あまり電話を掛けることはない。だから重要なことなのかな、なんて思いながら通話を続けた。
"うん、そうだよね。稜はいつ帰ってくるんだっけ?"
「そうですねー、」
ソファーに埋めていた腰を持ち上げ、電話を耳に当てたままリビングの通路近くに貼られたカレンダーのところへ向かう。
「来週の半ばから昴くんもお休みを貰えるそうなので…、再来週あたりには。」
そう告げる私に、そっかー、と納得した様子のゆき。それから暫くの間本題を切りだすのを渋っていた彼女だったが、ついに観念したらしくあのね、と言葉を紡いだ。
"海…行かない?"
「へ?」