BRST!
"―――稜、"
何年か前の遠い記憶が脳を掠める。
過去にも現在にも、不安にならなかった訳じゃない。
でも私は彼を、"約束"は違わないと信じているから。
手の平の上に置いたリングを再びTシャツの中へと滑り込ませる。
しっかりと前を見据えれば、そう離れていない距離に位置するもう一つの"相川家"が見えてきた。
ブラウンに縁取られた呼び鈴へと指先を伸ばせば、背後から伸びた影にハッと気付く。
勢いづいたまま振り返ると、眼前に佇む予想外の人物を視線が捉え固まる私。
「久しぶりだな。」