BRST!
第2章
/拉致事件
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《稜 side》
遠い日の夢を見た。ちょうど今から6年前、中学2年生だった総とゆきと私。そういえば、あの日も朝から雨が降り続いていた――。
『総っ、総!"聖龍"に入ったって本当ですか!?』
『なんだ稜かよ。いきなり人んち来るなよなー。』
当時の総長は昴くんだった。昴くんは、総にはできれば暴走族に入って欲しくないと考えていた。だからこの話を聞いたとき、私はかなり驚いたんだ。
『どうしてですか!?なんで…『強くなるためだ。』
このときの総の瞳の強さは、今でも覚えている。彼の中でなにか重大な決意を秘めているように見えた。
『俺はまだ弱い。昴さんが稜を守っているように、俺も俺自身の力でゆきを守れるくらい強くなりてえんだ。』
『総…。』
清水ゆきは中学からの私の親友で。思えば総は、この6年間ずっと一途に彼女のことを想い続けている。
総長まで上り詰めた現在も学校には変装して通っていて、ゆきが自分と関わることで外部からダメージを受けないよう細心の注意を払っている。