BRST!



最悪の事態が脳裏をちらつく。こんなときに、総は何やってるんですか!



"おい、どうなってやがる!聖龍の総長に繋げたんじゃねえのか!"



ああ、間違えたんだ。きっとリダイヤルの一番上にいたのが私で、名前だけ見て男だと思ったんだろう。


総の名前もばれてないのか。だとしたら…どうしてゆきが拉致されているんだろう…。



"チッ、くそ!虱《しらみ》潰しに番号かけるぞ!...プツ"



ツーツー、と電子音が無情にも鳴り続ける。ゆき…どうか無事でいて!



「昴くん!」

「兄貴に電話で聞いといたぜ。南区の4番倉庫だ。なるべく急ぐが、1時間近くはかかるかもしんねーぞ。」

「さすがです。お願いします!」


響兄は腕のたつ情報屋だ。ゆきの居場所を特定することは朝飯前なんだろう。


昴くんは車のキーを持ち、私は家の鍵を持ち。マンションを飛び出した私たちは直ぐさま車に乗り込んだ。




―――――――――――…



昴くんは車を発進させ、速度をぐんぐん上げていく。叩きつけるように横殴りに降る雨が、窓から見える筈の景色を遮っている。


< 60 / 945 >

この作品をシェア

pagetop