BRST!
最悪の事態が脳裏をちらつく。こんなときに、総は何やってるんですか!
"おい、どうなってやがる!聖龍の総長に繋げたんじゃねえのか!"
ああ、間違えたんだ。きっとリダイヤルの一番上にいたのが私で、名前だけ見て男だと思ったんだろう。
総の名前もばれてないのか。だとしたら…どうしてゆきが拉致されているんだろう…。
"チッ、くそ!虱《しらみ》潰しに番号かけるぞ!...プツ"
ツーツー、と電子音が無情にも鳴り続ける。ゆき…どうか無事でいて!
「昴くん!」
「兄貴に電話で聞いといたぜ。南区の4番倉庫だ。なるべく急ぐが、1時間近くはかかるかもしんねーぞ。」
「さすがです。お願いします!」
響兄は腕のたつ情報屋だ。ゆきの居場所を特定することは朝飯前なんだろう。
昴くんは車のキーを持ち、私は家の鍵を持ち。マンションを飛び出した私たちは直ぐさま車に乗り込んだ。
―――――――――――…
昴くんは車を発進させ、速度をぐんぐん上げていく。叩きつけるように横殴りに降る雨が、窓から見える筈の景色を遮っている。