BRST!
何度かけてみても結果は変わらない。話し中を知らせる特有の機械音が、延々と私の耳を掠める。
「さっきの相手と話しているんでしょうか…。」
「…そう考えるのが妥当だろうな。」
片方の手は昴くんと繋がったまま。左手に携帯電話を握りしめ、雨粒が流れて縞模様を描く車窓へ視線を移す。
車内にこだまするのはワイパーが行き来する音と、雨が降り付ける音。私は親友へと思いを馳せ、彼と繋いだ右手に力を込めた――。
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――――…
《ゆき side》
――PM7:00
「――いたッ、」
…あれ。ここどこなんだろう…。
ズキズキする胸骨の下部に手を当てて目を凝らす。
視界に飛び込んできたのは古びた印象を与える黒ずんだ天井。期待していたわけではないけど、やはりあたしの知っている場所でないのは明らかだった。