BRST!
するり、と。
重力に従って流れ落ちていた黒髪を一束、細い指に絡め取られる。
「昴には絶対に負けない。」
そんな甘美な囁きと共に。
唯の手元にある漆黒のそこへ、優しい口付けが落とされた。
「俺だって、稜を守れるくらいの強さはあるって証明するから。」
そこまで言いきった唯はゆるりと瞳を細め、指に絡めていた私の髪を解放する。
そして「父さんと母さん来てるから、早めに来なよ」と言葉を残し、軽い動作でその場をあとにした。
その場に一人残された私は、
「(…だから、そういうことは私にするなっていつも言ってるのに。)」
そんなことを思っていたのだけれど。