BRST!
「本当よ!その"総長"さんって誰のことか知らないけど、あたしの知り合いにはひとりもいないし!」
「…はあ?」
「し・か・も!残念だけどあたし今フリーなの。誰のオンナでもないから絶対にその話は不実なものだ!」
ゼエゼエ、と荒い息を整える。兎にも角にも、あたしは別の誰かと間違えて連れてこられたらしい。
だったら、このまま帰してもらえるかもしれない。いや、絶対に帰らせてもらう!
「俄《にわ》かには信じられねえな~。姉ちゃん、ここでおとなしく待ってろよ。」
「っ、」
…駄目か…。突如希望の壁が崩れ去ったような気がした。男が扉を閉める音が、酷く虚しくあたしの心に響いた――。
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―――…
《稜 side》
――PM7:30
バタン、と車のドアを閉めて目的の場所へ駆ける。
が。
「!」
「思ったより早かったな、あいつ等。」
その光景に目を見開く。眼前では既に大人数の男たちの乱闘が始まっていた。