BRST!
そんな二人を複雑な思いで見つめる。
「…、」
浮ついた気持ちに促されるままに、口を滑らせてしまったのは他でもない私自身。
ブラウンやホワイトの色合いが満ち、甘い香りが漂うキッチンの中、腹の底から冷えていくような感覚に足が竦みそうになる。
里麻はいい子。これは本心として断言できることだ。
けれど、僅かながらに緊張の糸を張りつめるゆきと向かい合う里麻を前に、もうどんな感情を持ち合わせていいのか分からなくなったのも事実で。
もし、里麻が。
ゆきを介して"聖龍"という族のブランドを見ているのだとしたら、なんて。
たとえ仮定だとしても考えたくないことで、徐々に視線を落とした私はスリッパに包まれた自分のつま先を見つめていた。