BRST!
「(、まさか…!)」
慌てて周囲に視線を飛ばした私は、ある事実に気付くと共に唇を噛み締める。
見当たらないアスファルト上の白線。静けさに包まれた界隈。
やられた。
うまい具合に、路地裏に誘い込まれていたんだ。
一般人にも気付かれないような自らの状況に、軽い吐き気すら込み上げてくる。
「これでお前が逃げる術は、絶たれたも同然だ。」
「…一体何が望み、なんですか。」
「さあ、な。」
三日月に細められた男の瞳は狂気を孕んでいて、震えそうになる自分の腕に爪を立てて抑え込んだ。
恐がるな、私。強くなるって決めたじゃない。
私に出来ることは、最後まで全うするまでだ。