BRST!
/封筒
「――ちゃん、稜ちゃん…!」
ハッとして辺りを見渡した。
そんな私を見て安堵の息を洩らしたのは、響兄で。
目の前に居る幼少の頃からの兄のような存在。
そんな彼を見て、私は嫌な夢を見ている訳でもなくて。
これは、紛れもない現実なんだと。改めて突き付けられた気分だった。
「…、響兄。」
薄い吐息が口から洩れた。
涙なんて潤いのあるものは、何時まで待っても出てきてくれない。
私の中に在るのは、空虚に満ちた心だけ。
――手の中に、視線を落とした。
「…、……」
力を込めれば、ジャラ、という音と共に見覚えのある貨幣が肌に食い込んでいく。
ねえ、昴くん、なんで。
「なんでこんな、お金なんか置いて行ったりしたんでしょうね。」
「……、」
「別に、ルームサービス代くらい私にだって払えるのに。」
「…稜ちゃ――」
「こんなもの、置かれたら!」
両肩に手を添えて、落ち着かせようとしてくれている響兄の言葉を無理やり遮った。