BRST!
「まるでこれが、このお金が。私を抱いた代償みたいじゃないですか…。」
本当は分かっているんだ。
起きたときに一人だと気付いた私が、ちゃんと家に帰られるように。
響兄が来れない状況だとしても、タクシーを拾って帰宅できるように。
でも私は、
――そんな気遣い要らなかった。
「なんで居なくなったりなんか…。」
昴くんが居てくれるなら、響兄が迎えに来る必要もなくて。
昴くんが、居てくれるなら。お金を置いていく必要もなくて。
「(昴くんが、居てくれたら。)」
私だってこんな空虚な気持ち、知らずに済んだ。
ズキン、ズキン。
度々痛みを訴えてくる下腹部から思うのは、どう足掻いても昴くんのことで。
「稜ちゃん、まず帰ろう。ね?」
「……、」
「稜ちゃん…。」
――…昴くんが、誰にも何も告げることなく姿を消してから、数時間が経とうとしていた。