BRST!
バタン、と扉の閉まる音が耳に届く。
隣に視線を向ければ、響兄が丁度運転席に乗り込んだところで。
「なんか、変な気分ですよね。」
「ん、なんで?」
「だって響兄が運転とか…。」
クスクスと笑みを零せば、シートベルトを滑らせた響兄はムッとした表情を浮かべた。
「し、失礼な~!俺だって運転ぐらいできるよ、幾つだと思ってんの!」
「28歳の独身。」
「ひい、即答…!独身は余計だけどね!!」
ぷんすか口を尖らせながらチェンジレバーを動かした響兄は、ゆっくりとアクセルを踏み込んでいく。
その様子を少しの間見つめてから、窓の向こうへと視線を逸らした。
響兄は、好きだ。
もちろん異性としてじゃなく、家族として。
だって、こうして私のくだらない談話にもつき合ってくれて。
若干の違和感は拭えないものの、普段と同じように接しようとしてくれているのが分かるから。
「(――…、)」
意図的に昴くんに関する話題を出そうとしないのは、響兄も私も同じだった。