BRST!
背後で響兄が小さく息を呑んだのが分かる。
震える手を抑え込み、洩れそうになる息を必死に留めた。
「(昴くん、)」
仕事、やめるってどういうことか解ってるの?
私たちの前から姿を消して、こんなもの家に残して。
――どういう意図があってこういった行動を取ったのかは分からないけれど、これで一つ確かになったことがある。
「もう、戻ってこないつもりなんでしょうね…。」
くしゃり、薄い封筒が手の中で音を立てる。
カラカラに渇いた心はそのままで。涙なんて姿を見せる気配すらしない。
と、そのとき。
「…稜ちゃん、ちょっとそれ貸して。」
後ろから手が伸びてきたと思えば、然して力を込めていなかった所為でするりと封筒が抜き取られた。
難しい顔をして思案に耽る響兄を見上げる。
数秒、いや、数分かもしれない。
少しの時間が経ったあと、徐に顔を上げた響兄は確信めいた声色で言葉を紡いだ。
「――戻ってこない訳じゃない。タイムリミットまでにアイツを探し出せばいいんだ。」