BRST!
開口一番にそう告げれば、電話口向こうに居る彼がニヤリと笑った気配がする。
そして、
"でしょ?学校には絶対、そう言ってるだろうな~ってね。"
「…、笑い事じゃないんですけど。」
"あはは、昴もよくやるよね~。"
グラウンドから足を踏み出せば、砂の混ざらない冷たい空気が肌を刺した。
それに少しだけ目を瞑って、電話を持っていない手に息を吹きかける。
「あれでしたっけ。昴くんが族やってたときによくお世話になった、……闇医者?」
"うん、まあ俗に言えばそうだね。昴に言われて、診断書つくるのなんか御手の物ってやつ。"
「…ふーん…。」
やけに手の込んだ逃亡演出だ。
ただ一つ言えるとしたら、響兄と私を騙しきれなかったのが落ち度。
カバンを肩に掛け直し、僅かに迫った校門まで歩みを進めていく。
――と、そのとき。
「それにしても、相川休みだってなー。」
「ああ、あの若いセンコーだろ?」
不意に鼓膜を叩いたのは、この学校に在籍する生徒の声で。
"稜ちゃん?"なんて声を掛けてくる響兄もそのままに、ピタリと歩みを止めてしまった。