BRST!
「(――…、)」
そっと壁から身を離し、楽しげに談笑する彼らから遠ざかっていく。
等閑《なおざり》にしていた携帯電話を再度耳に押し当てれば、電話口向こうの男が何やら声を発していてそれを遮った。
「……すみません。」
"ちょっと稜ちゃん無事なの!?"
「全然――何ともないですから。」
ああくそ、意志とは関係なく流れ出る涙が鬱陶しい。
やや強引にそれを拭いつつ、校門の外を目指して足早に歩を進めた。
此処に居たら、無理やり胸の中心から追い出していた"彼"がひょっこり顔を出してしまうから。
――ねえ、昴くん。
何処に居るの、あの"黒い石"が何か関係あるの?
ずっと一緒に過ごしてきたじゃないか。
昴くんが道場をやめたときだって、"約束"という支えがあったから前を向いていられた。
でも今回は違う。戻ってくるという確証は何処にもない。
――貴方の居ない世界は、私が生きるには辛すぎる。