BRST!
と、そのとき。
「…ん……?」
聴き慣れたメロディーが耳に入り、視線を泳がせると目に留まったのは響兄のケータイで。
「きょうにいー!」
迷わずそれを引っ掴み、バーの中央テーブルに向かう傍らでそう叫ぶ。
すると慌てたように姿を現した響兄は、私の手にある物をみて瞬時に理解したらしく。
「…、…非通知だ。」
「誰……でしょうか。」
「分からない。とりあえず、スピーカーフォンにして出てみよう。」
眉根を寄せてそう言った響兄に同調するように頷き、余計な声は洩らさないよう固く口を閉ざした。
そんな私の様子を一瞥した響兄は、ゆっくりと受話のボタンに指を置く。
通話は開始されたはず。
にも関わらず落とされた沈黙は、相手側も無言を貫いていることを意味していて。
「……もしもし?」
警戒心を前面に押し出したような声色でそう紡ぐ響兄に、何やら向こう側で機械音が応えるように響く。
それを耳にして思わず顔を見合わせていれば、直ぐに響いた言葉によって意識は其方に戻されることになった。