BRST!
"――…相川響か。"
ぼつり、電話越しに零された声がバーに響き渡った。
神経を尖らせる私たちの耳に届いたのは、聞いたこともない男の声で。
そろり、視線を隣の従兄へずらしてみれば。
一瞬だけ目を見開いた彼は、次の瞬間には真剣な面持ちで薄く口を開いていく。
「……ああ、俺だ。」
瞳を鋭く光らせて紡がれた響兄の声は、今までにないくらい真摯で低音のものだった。
その余りに普段と掛け離れた姿に思わず息を呑む私。
だが、次の瞬間に鼓膜を叩いた相手側の台詞に全思考を奪われることになる。
"相川昴を返して欲しければ、今から指示する場所へ来い。"
な、に?
この人いま何て――
"来なければ、相川昴は殺す。"
音を立てて、私の中のナニカが崩れ落ちた瞬間だった。
「、稜ちゃん…!」
「すみませ、」
ふらりと傾いた身体は重力に従って倒れ込んでいき、そんな私を見た響兄はハッとしたように腕を伸ばしてくれた。