BRST!
―――――――――――…
冬の夜風が肌を刺していく。
「はあ……、」
溜め息を吐いたところで気分が紛れる訳でも、罪悪感が薄れる訳でもない。
彼女から貰ったマフラーに鼻先を埋め、今し方一緒に過ごしていたホテルを見上げた。
稜が、目を覚ましたとき。
俺が居ないことに気付いて、どんな気持ちになるか。
宿泊したのは普通のホテルで。
ラブホテル特有のあの空気は無いにしても、帰り際女一人なんて好奇の目に晒されるに違いない。
それを予測出来る上でこんな行動に出るなんて、俺はこの上なく人で無しだ。
数時間前、彼女が腰を下ろしていたバイクの後部座席にそっと指先を添えてみる。
「…、」
そんな筈は無いのだけれど。
何故だか彼女の、稜の温もりが伝わってくる気がして。
「――…ごめん、稜。」
呟くように零した言葉は当然彼女の耳に入ることもなく、感情の無い冷たい空気に呑まれていった。