BRST!
/対峙
《響 side》
バタン、慌ただしく車のドアを閉めた俺らはそのまま目的の場所へ進んでいく。
「…、……」
「……、」
普段の稜ちゃんと俺の間に流れる空気とは正反対のものが、如何に"現在《いま》"が重要であるかを物語っていた。
非通知で電話を掛けてきた男が指定したのは、嘗《かつ》てアクセサリーショップとして使われていた建物で。
伸び放題の草木に、錆びた外装。
今となっては"廃墟"とも取れる外観のそれを前に、此処に来て初めて俺らの足が歩みを止めた。
「……ここ、なんですよね。」
「うん。」
うん、分かるよ稜ちゃん。
アクセサリーショップなんて言うから、もっと煌びやかなものを連想するよね普通。
でも、住所もドンピシャ。
加えて言うと、ボロボロの看板に記されたアルファベットも男の言葉と一致している。
…まあ、辛うじて読み取れるくらいなんだけれど。
と、そのとき。
「き、響兄!あれ…!」