BRST!



「うふふ驚いてる、驚いてる。ねえお嬢さん?私のこと、見覚えないかしら?」

「…は、私……?」

「そうよ、アーナータ。」



語尾にハートマークでも付きそうな口調でそう音にする彼女を呆然と見つめれば、背後で響兄が息を呑む気配がした。


そこで、気付く。


"ああ、ジョゼのこと?"

"ジョゼって?"

"ん?あの女――…"





「ジョゼ、なんでお前が此処に…!?」

「あら響、居たの。」

「はあ?居たの、じゃないだろ!」

「ねえ、黙ってくれない?今は彼女に話し掛けてるのよ、アンタじゃないわ。」



――バッコン!

そんな音に驚いて視線を向ければ、彼女の傍に置かれていたアンティークの置物が粉々に打ち砕かれていた。



――…その、華奢な手によって。






「…っ、」


思わず音もなく息を呑みこんだ。



あんなことが可能なの?

さっきのステッキといい置物を破壊する姿といい、女の人が――しかも華奢で、スタイルの良い彼女が。



自分の目で見たにも関わらず、俄《にわか》には信じ難い出来事で。

妖艶な笑みを口許に浮かべる彼女は、ゆらりゆらりと掴み所のない動きで此方に歩を進めてくる。


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