BRST!
「稜ちゃん、…!」
ついに私の眼前まで迫った"ジョゼ"に焦ったような表情でそう言い掛けた響兄だったが。
「シー…、いい?響、そこから動かないで。」
手のひらを開ききって響兄へと向けた彼女は、念を押すようにそう口にして彼の動きを封じた。
「さーて、お嬢さん。」
「、…!?」
有ろうことか、彼女は華奢な指先を私の顎先に添えて上を向かせたから言葉を無くした。
そんな此方の表情を見てクスリと笑みを零したブロンド髪の"ジョゼ"。
彼女の身体から漂ってくるローズの香りはまるで麻薬で、くらりと脳が揺れた気がした。
「貴女の恋人、助けに来たんでしょう?」
「、昴くんを返して…!」
「ちょっとそれは"まだ"駄目なのよ、ごめんなさいね。でもねえ…、」
ゆるりと瞳を細めた彼女は、捕食者のような色をその表情に孕ませて。
「貴女が代わりに捕まってくれるなら、考えても良いわよ?」
「…代わりに……?」
「そう、"彼"の代わりに。」