BRST!
/黒幕
「(この人…、)」
"黒い石"を取り込んでいるんだ。
ニヤリと弧を描いた口許からは見たこともない"キバ"が覗き、その余りに野性的な風貌にぞわりと肌が粟立った。
「テメェからだ、嬢ちゃん。」
そう言うや否や、突進してきた男――…果たしてそう呼んでいいものかは解らないが、敵であることは間違いない人物が襲い掛かってくる。
私を拘束していた女の人はいつの間にかその身を翻していて、ガラ空きになった私は咄嗟のことで受け身を取ることが精一杯。
「…ッ、」
「始末してから、たっぷり遊んでやるよ。」
男が片手の爪を揃えて上に向ければ、その時を待っていたかのように頑丈なモノが伸びていって――…
――ジャキン!
鋭利な刃物をその指に誕生させた男は、私目掛けてその"凶器"を振りかざして、そして。
「――稜ちゃん…!!」
目を見張って事の成り行きを目視することしか出来なかった私の身体からは、呆気なく赤い血が吹き出した。