BRST!
《響 side》
思わぬ凶器によって、肩口を切り裂かれてしまった稜ちゃんを呆然と見つめる。
段々と床に崩れていく彼女はまるでスローモーションのように、自分の血が池のように広がるそこに倒れ込んでしまった。
――嘘、だろ…?
余りに悲惨なその光景に息を呑むことしか出来ず、俺が動き出すまでには数秒のラグが生じた。
「稜ちゃん…!」
やっとのことで思考を取り戻し、足を踏みだした俺を横から伸びた華奢な隻手が引き止めた。
「響、駄目よ。残念だけどもう彼女は――」
「そんなのまだ分からないだろ!?いいから離せよジョゼ…っ!」
「なんであの子に拘るの!?あの子は響にとって何なのよ!」
「妹だ!!ずっと昔から見てきたんだ、いいから離せっつってんだよ!」
半ば無理やりに絡み付く腕を振り払って前を向けば、尚も信じ難い光景が俺を襲う。
「――は、昴…?」
天井から軽やかに飛び降りた男は間違いなく俺の弟であり、稜ちゃんの恋人だったから驚いた。