BRST!
「――う、稜…!」
躊躇うことなく血に塗れた稜ちゃんを抱き寄せた昴は、嘆願するように彼女の名を呼ぶ。
おかしい、おかしいんだよ。
だって昴は、部屋の奥にボロボロの状態で拘束されてるじゃないか。
その様子を踏みだし掛けた状態で凝視している俺の横では、ジョゼが意味深な言葉を落としていた。
「あーあ、出て来ちゃって。死にたくなきゃ隠れてなさいって言ったのに…。」
「は?何言って――」
問い詰めようとした俺の台詞は、その言葉尻まで紡ぐことは叶わなかったけれど。
「…、……」
目を閉じきってしまっている稜ちゃんをしっかりと抱き締めて、黒々と長い髪に自分の顔を埋めている昴から恐ろしいほどの"オーラ"が発生したからだ。
二人が居る血の池。
その中央から渦巻くように"紅"の空気が二人を包み込み、そのまま立ち上っていく。
「……許さねえ。」
低く地を這うように紡がれた昴の声は酷く震え、まるで泣いているかのようだった。