BRST!
何重にも重なったような声が店内に響き、地鳴りのような音が共鳴して鼓膜を叩く。
「稜、お前血は…?」
「大丈夫みたいです。大分塞がってくれましたから…。」
「そうか。」
安堵の息を吐いた昴くんは、しっかりと私を支えながら鋭い視線を敵の男に向かって飛ばした。
恐らくまた、昴くんのほうに突っ込んでくるだろう――…
そう考えていた私たちの予想は、見事に裏切られることになる。
「アッハハハハ!!力が漲《みなぎ》る…!俺は無敵だぁああ!!」
目は肉に紛れて引っ込み、髪は針金のように鋭く太く伸びていき、筋肉は歪《いびつ》な形に盛り上がっていって。
見るからに人外である、と。
言わざるを得ないその信じ難い風貌を目の当りにし、思わず口許を覆い隠して視線を逸らした。
――ダンッ!
そんな大きな音と共に"嘗《かつ》て男だった生き物"が向かった先は――、
私でも昴くんでも無く、響兄のところだったんだ。