BRST!
倒れ込んだ男の変形した肉体はそのままだったけれど、周囲には見覚えのある"黒い石"が固体として姿を現し始めて。
「…ジョゼ……。」
悲痛な響兄の涙に紛れた声が、この小さな店に響き渡った。
「響兄!ジョゼさん、ここまで運んできてくれませんか。私だったら治療出来ます…!」
「…稜ちゃん…。」
「ちょっと待て、稜!自分の傷だってまだ塞がってないんだ、他人の治療までして一気に"能力"を使い切りでもしたら――」
「大丈夫です、自分のことくらい自分で分かります!」
頑として譲らずそう言葉にすれば、根負けしたらしい昴くんも手を貸してくれて。
「…これは、身体を貫かれてます。私の力が及ぶかどうか…。」
「…、……」
「響兄、手握ってあげてください。大事な女性《ひと》なんでしょう?」
「うん…。」
ジョゼさんの華奢な手を響兄が握り締め、私の能力から発生する柔な緑色の光が店内を包み込んだ。
――でも間違いなく彼女の傷は致命傷で、弱まっている私の力だけではもうどうしようもなかったんだ。