たぶんこれを、初恋と呼ぶ
「やっぱり八嶋とか、どっかの会社のCEOだとかいう人の方がいいんじゃないの」
「…どういう意味?」
「俺以外の奴の方が外見もいいし金も持ってるし経験豊富だし、そういう奴の方がどう考えても梅ちゃんにあってる。………俺、梅ちゃんが俺のどこが好きなのか全然わかんねえ」
耳を疑った。
心臓の奥で、ボワッと爆発したかのような衝動が起きた。
「何それ、ずっとそんな風に思ってたの?…私が恭平とヨリ戻せばいいって?」
「……」
「全部安尾くんと付き合う前の話だよ…」
「……」
「安尾くんの過去が気になるのは、私だって同じだよ。安尾くんだって童貞捨てたんでしょ。同じじゃん。でも私一回も安尾くんにその話出した事ないよね?」
「いや、俺のはそういうのじゃないし…」
「そういうのって何。私はヤリ目でもいいから安尾くんと付き合ったのに、結局振られて安尾くんは私じゃない人とやったんじゃん。私以外の人とやった事に変わりないでしょ」
「それは…」
「……ごめん、私、安尾くんが思ってるより余裕ないんだよ」
「え?」
「このままだと酷い事しか言えないと思うから、今日は帰るね」
「えっ」
心の中がめちゃくちゃだ。
私が言った事だって、どうしようもない事だっていうのはわかってる。
だけど、あれは…あんな事を言われて我慢できる程、私は優しい人間じゃない。
私は安尾くんが他の誰かと付き合えばいいなんて思った事、一度もないよ。