たぶんこれを、初恋と呼ぶ
気付いたら、自分の家のソファで寝ていた。
八嶋から、「無事に家に着きましたか?」とLINEが来ていた。お礼の返信を送って、シャワーを浴びる。小鳥の鳴き声が聞こえるので、もう朝だろう。
昨晩八嶋に、すげえ恥ずかしい事を言った気がする。
まあ相手の事は喋ってないだろうし、喋ってたとしても八嶋の知らない相手だ。…いや、もし今後八嶋がMSMさんと関わればバレるな。それは気まずい。
「あ、先輩おはようございます」
「おはよ。あのさ八嶋…昨日の事なんだけど。悪かったな、タクシーもありがとう。俺、相当酔ってたよな。何か変な事言ったりしてた?」
「いや、変な事は言ってなかったです。でも元カノさんと再会したっていうのは聞きました」
「え!?嘘だろ!?」
「どこで再会したんですか?7年経って再会とか、すごい偶然っすね。もしかして運命とか」
「お前でも運命とかそんな事言っちゃうのか」
「いや、まじで今自分で言って鳥肌立ちそうになりました。でも安尾先輩って仕事じゃあんまり動じる事ないんで、女性で悩むっていうのが意外でした。ちょっと親近感湧きました」
「はあ!?親近感て!そういうのは俺みたいなやつがお前に使う言葉だぞ」
八嶋、本気で眼科に行った方がいい。
俺みたいなカースト最下位の人間が女性に悩むのは当然の事で、悩むのが意外っていうんならむしろそれは女性関係をもう諦めているからだ。
八嶋が元カノをまだ引きずってるって聞いて、俺だってほんの少しだけ親近感が湧いたのだ。
気を取り直して、仕事に取り掛かろうとメールを確認する。
今までは社内メールをざっと見る程度だったが、彼女から仕事関係のメールが来るようになって、俺は定期的に見落とさないようメールチェックをするようにした。
俺がどうしてもデザインに入れて欲しい部分をまとめて送って、彼女から大まかなデザインサンプルがいくつか送られてきた。
デザインに関わっているのは彼女の他にこの前紹介された2人がいるが、ちゃんと一緒に参加しているのだろうか。