たぶんこれを、初恋と呼ぶ
「お、それサンプル?」
後ろを通りかかったアツシさんがPC画面に気付き、それを覗き込む。
「はい。とりあえずパッケージ分だけ頂きました」
「さすが、百合川さん仕事早いな」
「…これ、百合川さんだけでやってるんですかね?」
「ん?どういう意味?」
「デザイナーはあと2人いて、一度挨拶しただけで決めつけるのも悪いですけど、何かそんな協力的に見えなかったというか…」
「ああ、そうかもな。言っただろ、百合川さんて事務の時からデザイナーの穴埋めっつーか尻拭いっつか、そういう事してたんだよ。まあ、今まで事務だった人が社長直々にデザインに引っ張られて、デザインの専門を出たわけじゃないのにセンス抜群で、いきなり担当持つってなれば周りはいい気しないんじゃないの」
いくらなんでもそれは、酷いんじゃないのか。
仕事ができるからって、それはただ周りの怠慢だろう。
彼女は大丈夫なのだろうか、体力的にも精神的にも。
周りに助けてくれる人がいないっていうのは、きついものだと思う。
しかしこういう時に仕事相手に何と声をかけていいのかわからない。
でもスルーする事も出来なかったので、『もし困った事があれば、いつでも遠慮なくご相談ください』とだけ送った。
数時間後に、彼女から『お気遣いありがとうございます』とだけメールが来た。