たぶんこれを、初恋と呼ぶ



 彼女の知り合いの店だというそこは、外見はシンプルで見るからに洒落ていて、俺には人生で一度入るか入らないかのタイプの店だ。今がその人生に一度のタイミングなのかもしれない。

一番のピーク時を過ぎて少し遅いランチになったので、店内には空きがあった。

内装も落ち着いていてとにかく洒落ていて、立っているだけで緊張する。



彼女に気付いた男性店員が、「梅ちゃん!」と彼女に声を掛けた。

彼女とそう年の変わらなそうな優しそうな男性だと思った。


「ヒロキ君久しぶり。朝子は?」

「奥にいる。待ってて、呼んでくるよ」


そう言って連れて来たのは、これまた優しそうな女性。
彼女が名前で呼んでいたので、友人なのだと思う。


初めて見る二人は、雰囲気がよく似ていた。



「梅!最近全然来ないから心配したよ」

「ごめん、仕事で余裕がなくて」

「梅、一人で頑張りすぎる所あるからなあ」



この人は、彼女の事をよく見ているらしい。




彼女と付き合っていた頃、一度だけ彼女が友達といるところを見掛けた事がある。

失礼だが、外見だけで言ってしまうとスカートが短ければ化粧も濃く、声も大きかったし何より見た目からして性格もキツそうで、絶対に俺の苦手な部類だと思った。


彼女の友達はそういう子が多いんだろうと思っていたので、このようなタイプの子と仲がいいのは少し意外だった。



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