たぶんこれを、初恋と呼ぶ
「梅、彼氏できた?」
休み時間に、友達の朝子が突然そう聞いてきた。
朝子は友達の中でも大人しくて、いつも人の話を聞く側のタイプの子。私にとっては、同じグループの中で一番気が合う子だった。
「えっ、よくわかったね」
「ふふ、梅、ちょっとテンション高いよね」
「ばれたかー」
朝子との会話が聞こえたのか、少し離れたところから同じグループのリナが「えっ、梅、彼氏できたの?」と興奮気味にやってきた。
「うん、彼氏って言っていいのかわかんないけど、多分できた」
「何それウケる。この前言ってた人?何繋がり?」
「そう、お兄ちゃんの友達」
「え、いいじゃん!梅のお兄ちゃんかっこいいよね〜。友達もイケメン?」
「そういうのじゃないかな。でも良い人だよ」
「えー気になる。写真ないの?」
「ないけど…」
「ふーん。でもイケメンじゃなくても年上なら色々奢ってくれるでしょ?」
「いや、そういうのはわかんないけど…」
「えー、年上と付き合う意味ないじゃん!」
前にディズニーのランドホテルに連れてってくれたという年上の彼氏持ちのリナの言葉に、私は素直に頷けなかった。
同じグループにいるからといって、全て気が合うわけではない。気が合わないのにどうして一緒に行動を共にするのかと聞かれたら答えにくい。
ただ、外見が似てるからとか、一緒にいると損より得が多いからとか、そういう浅い理由で、きっとこういうのを上辺だけの関係というのだと思った。
「写メとかないの?見せてよ」
「えー、持ってない」
こっそり撮ったやつは持っているけれど、見せたくなかった。
きっと自分の彼氏と比較して、散々ディスって、「どこが好きなの?」と笑いながら聞いて来るんだろう。
絶対に教えない。
安尾くんの良いところは、私だけが知っていれば良い。
小学生みたいな独占欲をずっと私が抱えていた事なんて、きっと誰も気づいていなかっただろう。