たぶんこれを、初恋と呼ぶ



 安尾くんと付き合い始めて2週間が過ぎた。
分かっていた事だけど、会う時はやはり家が多かった。

一度彼の実家にお邪魔した。それ以外はほとんど私の家。
といっても、7割は兄とのゲームの為で、残りの3割が私に会いに来てくれているという感じだ。それでも私は以前より彼に合う回数が増えて、充分だった。


安尾くんのお母さんは、とても話好きな人。彼とは対照的で、初めて会った彼のお母さんに驚いたけれど、話が面白くて私は好きだった。でも安尾くんにとっては私と彼のお母さんが絡むのは少し嫌だったみたい。


安尾くんは、付き合い始めてから我が家に来る事を最初は遠慮していたそうだが、元々付き合う前から何度も来ていたし父も母も大人しく礼儀正しい安尾くんには優しくて、すぐに安尾くんは兄がいなくてもうちに来ることに慣れた。

と言っても、安尾くんとはそんなに長い時間会う事はなかった。
安尾くんは大学とバイトで忙しそうだったし、私も友達との予定やバイトがあった。

だから家で会う時は本当に貴重な時間だった。


二人で近所のレンタルショップに行って観たいDVDを借りて、家に帰ってDVDを観ながらムッちゃんと戯れる。それだけで充分幸せだけど、でも欲を言えばもうちょっと触れたい。


キスとかそういう事を安尾くんがするのは想像つかなくて、でも私はして欲しくて、安尾くんが私の部屋にいるだけでドキドキした。

でも安尾くんがキスはおろか彼から触れて来ることはなかったので、私はいつも彼の隣にピタリとくっついていた。


手を繋いだのも私から。でも、キスは自分からはできなかった。

勝手に自分からして軽い女だと引かれたら嫌だし、そもそも私からキスして嫌がられたら普通にショックだし。


安尾くん、いつそういう事してくれるんだろ。


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