たぶんこれを、初恋と呼ぶ
安尾くんと別れた後、私はいっちょ前に傷ついていた。
振られて半年が経っても、また安尾くんから連絡があるかもと馬鹿みたいに少しの期待を持っていた。
クリスマスが終わって一度実家に顔を見せた兄に、安尾くんと別れた事を告げた。
兄は「まじで!?」と驚いたが、それだけだった。
安尾くんの様子を兄から聞く事はなかった。
私から聞きたかったけれど、そんな事をしたら兄から安尾くんに伝わって、うざい、重いと思われると考えてしまいできなかった。
朝子はそんな私をずっと見守ってくれていたけれど、当時同じグループにいたリナには「何で新しく彼氏を作らないのか」と不思議がられ、散々男の子を紹介された。
でも私は気が乗らなくて、いつも安尾くんの事を考えていた。
私が子どもだったから、安尾くんに愛想をつかされたのかも。
「そういう目的」で私と付き合ったのに、私が子どもすぎたからそういう気が起きなかったのかも。
そう思って、私は化粧を濃くしたり、無理なダイエットをしたり、悪い方向へ進んでいた。
そんな中で、他校に通う恭平から連絡があった。
恭平は高校生になったばかりの頃に、リナの当時の彼氏の友達として紹介され、何度か数名で遊んだ事があった。
最初の頃にLINEをしていたくらいで、普段はあまり連絡を取らない。
でも、私は恭平の事はよく覚えていた。
恭平はリナが紹介してくるチャラい男の子とはどこか違った。
クラスの人気者タイプだというのは外見で何となく分かっていたが、性格は落ち着いていて、同年代では稀に見る穏やかな男の子だった。
頭が良く、この辺では一番の進学校に通っていた。安尾くんと兄の母校だ。
たった3週間だけだというのに、私が年上の男の人と付き合っていたのを知っていたようで、その人と別れたというのもどこからか聞いたようだ。