たぶんこれを、初恋と呼ぶ

「……俺の勘違いだったら悪いんだけど」


タクシーが恭平の家に近づいて来た頃、ぽつりと恭平が話を切り出した。



「…梅と安尾先輩って、何かあった？」

「なんで…」

「いや、俺今日ずっと梅の事目で追いかけちゃってたから。安尾先輩も梅に対してなんか柔らかい感じがしたし、梅も…先輩に対して何か周りと違った気がしたから。もしかして、先輩の事気になってる？」

「…」

「あー、やっぱりそうなんだ。それなのに俺について来て、先輩、誤解してるよ。解かなくていいの？」

「……いいよ、あの人天然だから。計算じゃなくて素でああいう行動されるとこっちが忘れそうになるから、困る」

「え？」

「既婚者でしょう、あの人。なのに私全然冷めなくて、むしろ会う度に好きだって思う。相手の生活壊したくないし一線越えるつもりはないけど、私から諦めるのはもう無理だと思う。だったら誤解して、気を使って距離置いてくれた方がいい」

「…ああ、そういう事か」



はは、と隣から乾いた笑い声が聞こえたので、彼を見る。

恭平は泣きそうな顔をして笑っていた。