たぶんこれを、初恋と呼ぶ
「…梅ちゃん、土曜、暇?」
部屋でDVDを観ながらごろごろしていると、珍しく安尾くんがそんな事を聞いて来た。
「えっ、暇!」
「この映画の続編が金曜日から公開らしいんだけど、良かったら観に行かない?」
「えっ、観たい!行く、行きます」
安尾くんからデートに誘われるなんて初めてだったので、私のテンションはぶちあがった。
何着て行こう、安尾くんはどういう格好が好みなんだろう、映画以外はどこに行こう、安尾くんに任せていいのだろうか、でも任せっきりは良くないし、どうせだったら2人で行くところを決めたい。
「他にどこ行く?」
「え、他?」
「うん、ご飯とか色々」
安尾くんの反応からして、映画以外に行くとは全く考えていなかったようだ。
でも私も、この機会をみすみす逃すわけにはいかない。
「安尾くん行きたい所ないの?」
「うん、ないかな」
「じゃあ、13時からの映画でいい?夜ご飯は何食べたい?」
「何でもいいよ」
「んー…じゃあ、ちょうどパスタの美味しいお店で行きたいところあったんだけど、いい?」
「うん、どこでも」
どこでもいいか。どうしよう。安尾くん、行きたい所ないのか。さっきの会話の感じだと、映画の他にどこか行くつもりもなかった感じだし。楽しくないのかな。安尾くんにつまらないと思われたくない。何とか安尾くんに楽しんでもらいたい。あわよくば、いい雰囲気に持っていければいいんだけどなあ。