たぶんこれを、初恋と呼ぶ



「…梅ちゃん、土曜、暇?」

 部屋でDVDを観ながらごろごろしていると、珍しく安尾くんがそんな事を聞いて来た。


「えっ、暇!」

「この映画の続編が金曜日から公開らしいんだけど、良かったら観に行かない?」

「えっ、観たい!行く、行きます」


安尾くんからデートに誘われるなんて初めてだったので、私のテンションはぶちあがった。

何着て行こう、安尾くんはどういう格好が好みなんだろう、映画以外はどこに行こう、安尾くんに任せていいのだろうか、でも任せっきりは良くないし、どうせだったら2人で行くところを決めたい。


「他にどこ行く?」

「え、他?」

「うん、ご飯とか色々」


安尾くんの反応からして、映画以外に行くとは全く考えていなかったようだ。
でも私も、この機会をみすみす逃すわけにはいかない。


「安尾くん行きたい所ないの?」

「うん、ないかな」

「じゃあ、13時からの映画でいい?夜ご飯は何食べたい?」

「何でもいいよ」

「んー…じゃあ、ちょうどパスタの美味しいお店で行きたいところあったんだけど、いい?」

「うん、どこでも」


どこでもいいか。どうしよう。安尾くん、行きたい所ないのか。さっきの会話の感じだと、映画の他にどこか行くつもりもなかった感じだし。楽しくないのかな。安尾くんにつまらないと思われたくない。何とか安尾くんに楽しんでもらいたい。あわよくば、いい雰囲気に持っていければいいんだけどなあ。




< 7 / 116 >

この作品をシェア

pagetop