たぶんこれを、初恋と呼ぶ
「だから…」
「私が安尾くんで遊んで立って、どういう意味?遊びで付き合ったつもりなんて、これっぽっちもなかったよ」
「……だってお前、ヤスと別れても平気そうにしてただろ。普通に彼氏できてたし」
「何それ。お兄ちゃん、ずっとそんな風に思ってたの?私がどんな気持ちで安尾くん諦めようとしたと思ってんの?普通に、簡単に彼氏できたわけじゃないよ。フラれてても安尾くんの事ばっかり考えて、どうしていいか分かんなかったんじゃん」
「……お前、ヤスの事本気だったの?」
「本気も何も、好きじゃなきゃ最初から付き合ったりしないよ。お兄ちゃんと一緒にしないで。……この前、安尾くんの様子が少し変だった。安尾くんに何言ったの」
「……お前の元カレの事とか」
「お兄ちゃん、私の元カレの事なんてロクに知らないでしょ。勝手な憶測で余計な事言わないでよ!」
私の声に驚いて、ムッちゃんが「ワン」と軽く吠えた。
こんなに大声で怒鳴ったのはいつ振りだろうか。小学生の時振りくらい、遥か昔な気がする。
自分で言うのもなんだが、それくらい私は滅多に声を荒げたりしないので兄はとても驚いていた。