たぶんこれを、初恋と呼ぶ


「な、何かあったのか、ヤスと」

「……べつに。もう会わないつもりだったし、どうでもいい」

「は?もう会わないって、何で」


さっきまでは振り回すなだとか言っていたくせに、会わないと言ったら「何でだ」と聞かれた。本当に勝手な兄だ。


「安尾くんにはもう相手がいるじゃん。その幸せぶち壊してまで自分のものにしたいなんて思っててもできないよ」

「……相手?もしかして、指輪の事?指輪の事言ってんの?」

「そうだよ。それしかないでしょ」

「あいつまだその嘘隠してんの!?」

「……うそ?」

「いや、いい。わかった。お前らお互いにすげえ変な誤解してる。お前は一旦冷静になってろ」

「だから何なの」

「いいから!大人しくしてろ!」


兄が何を言って何に納得しているのかわからなかったが、それ以上聞いても「待ってろ」の一点張りだった。

確かに言われた通り、私は頭に血が上っている状態で、アドレナリンも出まくっている状態だ。

頭もくらくらする。今日はもう何も考えたくない。

そうだ。もう安尾くんに会う事はないのだから、これ以上悩む事はやめよう。



ベッドに潜り込んで、私はじっと目をつむった。





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