たぶんこれを、初恋と呼ぶ
翌日の終業後、恭平から「今、電話大丈夫?」とメッセージが届いていた。
恭平と連絡を取るのはあれ以来で少し身構えてしまったが、緊急の用かもしれないのでこちらから電話を掛けた。
ワンコールで、すぐに繋がった。
「あ、もしもし?梅?ごめんな、急に」
「ううん、ちょうど帰るところだったし。どうしたの?」
「あのさ。1つ、いい事教えてあげようか」
「え?」
穏やかな声で、そう切り出された。
何の事かと思ったが、電話越しにくすりと小さな笑い声が聞こえた。
「安尾先輩の携帯のロック画面、何だと思う?……何年前の写真だよって突っ込みたくなるくらい荒い画質の写真。飼ってもないのに、誰かの家の犬が写ってる」
「……え」
「梅、いつも犬と朝の散歩があるって言って、どんなに眠くても滅多に泊まらないで終電で帰ってたよね。俺、梅んちの犬に軽く嫉妬した事あるよ」
「……」
「俺は直接見た事ないからずっと気付かなかったけど、でも、ただ似てる犬ってわけじゃないよね。……ずっと梅が忘れられない男ってどんな奴かと気になってたけど、やっとすっきりした」
「……ごめん、恭平。ありがとう」
恭平は私を責める事はしなかった。