たぶんこれを、初恋と呼ぶ
名前
眼を覚ますと部屋にはビールの空き缶が散乱していて、アルコールの臭いが充満していた。
そういえば昨日夕飯を食べた帰りに、大量にビールを買って帰宅した。
明らかに晩酌程度の量じゃない。
今日も仕事だというのに、何考えてんだ、俺。
くそ、頭いてー。
時計を見ると、家を出る予定の20分前だった。
慌ててシャワーを浴び、家を飛び出した。
何とか始業ギリギリに間に合い、デスクに着いてふう、と息を整える。
「おはようございます。コーヒー飲みますけど、先輩もいりますか?」
「あっ、悪い。頼む」
八嶋とも特に何もなく普通に接している。
別に八嶋は何も悪くないし、俺が勝手に嫉妬しただけだ。
勝手な私情で後輩にあたる程阿保ではない。
……でも昨日の俺は、すごく情けなく思えた。
彼女が胸の内を伝えてくれて、俺は呆然としてしまった。
家に帰って大量にアルコールを摂取しながら、7年前と同じ事を繰り返してしまったのかと、自己嫌悪に陥った。
「安尾ー、ちょっといいか」
「はい!」
アツシさんに呼ばれたので、慌てて席を立つ。
仕事の件で少し話し合い席に戻ると、八嶋が声を掛けてきた。