たぶんこれを、初恋と呼ぶ
「先輩、携帯結構長く鳴ってましたよ」
「おー、ありがとう」
デスクの上に置いたままだった携帯を見ると、着信は聖からだった。
そういえば朝は慌てて出てきたので携帯を確認していなかった。
昨夜から数件の着信とメッセージが入っている。
遡って見ると、まず「電話に出ろ」と叱られ、「仕事終わったらすぐ連絡しろ」と切羽詰まった様子のメッセージが来ていた。
どうしたんだろう、何か急用だろうか。
気になったが、とりあえず終業後に連絡をする事にしよう。
「…あの、すみません。さっきちょっとロック画面見えちゃったんですけど…先輩、携帯のロック画面って、もう何年も同じですよね」
「え?ロック画面?あー、いちいち変えるの面倒で」
「前、友達の犬だって言ってましたよね。昔先輩が拾ったって」
「……あ、ああ」
八嶋に言われ、ドキリとする。
見られても分からないだろうとロック画面を隠していたわけではない。
八嶋はアッサムの事を知っているのかも。
「何だ、そういう事か…」
「ん?」
「先輩、俺前に先輩に余計な事言いました。気付かなくて、くだらない嫉妬してました」
「し、嫉妬?お前が、俺に?」
「確かに梅は元カノで、俺はずっと引きずってました。でもこの前、きっぱり振られてるんで。先輩が気使う必要、ないですよ」
「…何言って」
「むしろ、気遣いなんていらないです。早くその気持ち梅に伝えて、あいつの事解放してやってください」
八嶋はそれだけ言って席を立った。
振られてる?八嶋が彼女に?
……どうして。