たぶんこれを、初恋と呼ぶ

「絶対やだ」

「え」

「何で勝手に私が、安尾くんの事何とも思ってない事になってんの」

「え、いや、それは普通に考えて…」

「この前言った事、間違ってる。私本当は、安尾くんを忘れた事なんてなかったよ」

「…え?」

「ずっと、私が子どもだから嫌われてるんだと思ってた。安尾くんと別れてからも、安尾くんの事が忘れられなくて、早く安尾くんに似合う大人にならなきゃって思ってた。化粧も服装も全部見直したし、もしいつか安尾くんに再会できた時に大人になったなって思われるように勉強も仕事も頑張ってきたし、仕事先で偶然再会した時は本当に嬉しくて、認めてもらいたくてもっと必死に頑張った。……私は、安尾くんに出会った時から、安尾くんが私の全部だったんだよ」


何だこれ。
俺は夢でも見てるのだろうか。


実はまだ酒を飲んだまま寝てたりする?
この夢は俺の妄想?



「安尾くんの事忘れなきゃと思って他の人を好きになろうと思ったけど、結局私の中には安尾くんの存在があって、無理だった」

「…」

「安尾くん。お願いだから、安尾くんが嫌がる事とか絶対にしないし直すから、もう私から、離れていかないでよ…」


今にも消えてしまいそうな弱々しい声で。


俺は今まで、なんて馬鹿な事をしてきたんだろうと酷く後悔した。


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