たぶんこれを、初恋と呼ぶ
ムッちゃん





「先輩だったんですね、梅の元カレって」



 八嶋が一番に会社に来ているのは知っていたので、八嶋と話がしたくて翌朝はいつもより30分早く出社した。


いつもより早く出社した俺を見て、八嶋は何もかもわかっているように笑った。



「俺高校の時から、梅の事好きだったんです。最初は梅の事紹介されて何となく気になってて、でも年上の彼氏ができたって聞いて、諦めました。安尾先輩だったんですね」

「…年上の彼氏って名前負けしてたけどな」


思っていた事をそのまま伝えると、八嶋は眉を下げて「分かってないなあ」と困ったように笑った。


「付き合ってる間も、梅は年上の元彼の事まだ好きなんじゃないかと思ってました。悔しかったし、正直そんな奴に負けるわけないって思ったし、再会した時はマジでチャンスだって思いました。……でも安尾先輩と梅見て、納得しました。先輩でよかったと思ってます」

「え?」

「もっと自信持ってくださいよ。じゃないと俺、諦めきれませんよ」


「ごめん」や「ありがとう」というのは何だか違う気がする。

俺が言葉に詰まって何も言えないでいると、それすらも見透かされていた。



「何も言わなくていいっすよ。実は昨日、梅から電話がありました。形は違うけど、俺の事大切に思ってくれてるみたいです。それだけで無駄じゃないって思えたんで充分です。先輩、もう絶対梅の事泣かせないでくださいね」

「うん、絶対しないよ」


八嶋が真っ直ぐ俺を見る。

俺も八嶋に誠実に応えたくて、真っ直ぐに見て言った。


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