たぶんこれを、初恋と呼ぶ
事後に疲労で少し眠っていた梅ちゃんが起き、もうこんな時間かと、時計に目をやる。
「…そろそろ帰る?送ってくよ」
かなり名残惜しいが、無断で泊まらせるのも気が引けるし、何より梅ちゃん自身アッサムの事が気になって仕方ないだろう。
ベットの下に散らばった下着と服をかき集め、身に纏う。
一緒に外した腕時計をはめていると、梅ちゃんにじっと見られた。
「それ、再会した時に使ってくれてるの見て泣きそうになったなあ」
「え?」
振り向くと、枕を抱いてこちらを見ながら、彼女は微笑んでいた。
「本当は、再会してすぐ名刺交換した時に見えたの。それからずっと付けてくれてたよね。すぐにありがとうって言いたくなったけど、余計な事言って安尾くんが遠慮して付けるのやめちゃったら嫌だなと思って、言い出せなかった」
…確かに、再会したばかりの頃は思春期の男子みたいに変に意識をしていたから、そうなっていたかもしれない。